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 たっぷり10秒は時間を割いて一番無難な結論を導き出すと、いまだに背中を丸めて一心不乱に何かに夢中になっている変質者に回れ右して、とっととその場を去る事にした。  ボトッ――――。 「ん?」  何かが転がり落ちる音に思わず振り返る。そして、後の事を一切考えない、浅はかで愚かしいその行為を、一秒後に激しく後悔する事になる。  音の主――それは半裸男の足下に転がった女物の赤いハイヒールだった。それを脛の半ばから上の無い、血に塗れた細い足が履いている。よく出来たオモチャかとも思ったが、だとするとそんな物を好んで持ち歩くような奴は、相当頭のネジがぶっ飛んでいる。
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