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 ガササッ  グルルルゥゥゥウウゥゥゥゥ…………  遊歩道に沿って生える低木の間から、敵意剥き出しの唸り声を上げる、一匹の犬が鬼の背後に現れた。  犬はちょっとしたおっさんと同じ位の大きさのセントバーナード。赤い首輪と同色のリードを垂らし、全身を覆う手入れの行き届いた真っ白な毛は所々、ペンキを浴びたようにベットリと濡れている。  鬼は楽しみを邪魔されたと言わんばかりに顔をしかめ、ある程度の距離を取って威嚇する犬の方へ向き直る。  ウウウゥゥゥゥゥ…………  ひょっとしたらあの犬コロは、地面の染みになった女の飼い犬だったんだろうか。
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