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「さぁレイチェル、行こうか」
孤児院の玄関で、幼い金髪の少女は、今日から養父になる男の顔を見上げた。
優しい笑顔。
その笑顔を向けられることが嬉しくて、少女は男の手を取った。
「それでは失礼します」
「レイチェルをよろしくお願いしますのじゃ」
そう言って、老人は男に頭を下げた。
老人の隣で、銀髪で眼鏡の少年と体の大きな赤髪の少年が、ことの成り行きを見つめる。
「レイチェル元気でね。体に気をつけて」
「うん。ルークも元気でね」
眼鏡の少年は、少し寂しそうな顔をして少女に言った。
「ダズ」
少女は体の大きな少年を呼ぶ。
しかし彼は答えない。
少女が孤児院を出ていくことが決まってから、こんな調子なのだ。
「ダズ。これでレイチェルとお別れじゃぞ?」
老人が声をかけても、少年は口を固く結んで答えない。
少女はうつむいた。
悲しくなった。あんなに仲良くしていた少年が何も言ってくれないことが。
「そろそろ行こう、レイチェル」
男が少女の手を引く。
少女も後ろ髪を引かれながら歩き出した。
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