6人が本棚に入れています
本棚に追加
ピピピ…頭の上で目覚まし時計が鳴り出し新しい朝を知らせた、柚華は体を起こし目覚まし時計に手を伸ばした、ふと横に目をやると椅子に恋人の誠が赤い目をして柚華をじっと眺めていた、『おはよう、今日は早起きねーいつもは私が飛び乗ってもなかなか起きないのに』誠は無言のまま立ち上がりそのままバスルームの方に消えて行った。今日は寝不足で機嫌が悪いみたいね。柚華はたいして気にせず起き上がり朝食の用意を始めた、部屋にコーヒーとトーストの香りがたちこめ朝食の準備が出来上がると同時に上半身裸でバスルームから誠がやってきた、誠の上半身には背中から腕にかけ竜の刺青が彫られいる、誠が裏社会の住人になったのは今から6年ほど前の事で柚華と知り合う4年ほど前の事である、しかしそんな誠を柚華は一度も怖いと思った事など無く、どちらかと言うと5歳年上の誠の事を可愛い弟のようにさえ思える。そんな柚華は都立病院で臨床心理士の仕事をして多忙な毎日を過ごしている、今日は2ヶ月ぶりの連休が取れ、前日の夜から恋人である誠の家に泊まりに来ていた。付き合いだして丸2年何度か結婚の事も考えたが、真剣に考えれば考えるほど今の誠の職業が足かせになり、今一歩踏み出せないままで、最近では結婚の文字を頭の隅においやっている。
椅子に座った誠の前にコーヒーを差し出しながら『おはよう、今日二回目ですけどね』笑いながら語りかける柚華に誠は無言のままベッドルームの自分のスーツのポケットから2枚のチケットをテーブルの上に置き重い口をやっと開いた『今日で別れてくれないか』2杯目のコーヒーを入れる柚華の手が止まり、何が起きたか判らないような顔で誠の顔をじーっと眺めている、一瞬時が止まってた気がして、コーヒーを置くまでの時間が長く感じた、誠はそんな冗談を言う性格では無い事を柚華はよく知っている、しかし昨晩はお互い激しく愛しあい別れる理由なんて何1つ思いあたらない、半分放心状態の柚華を我に返したのは、目から溢れる涙の伝う感触だった。
最初のコメントを投稿しよう!