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泣き崩れる柚華をまるで目に入らないかのように、誠はスーツに着替えて部屋を後にした。呼び止め訳を聞きたい、今ここで理由も判らず離れてしまったらもう二度と誠に会えない気がした、しかし言葉にならない、悲しみを押さえ口を開けば大声で叫んでしまいそうだだった。
台所に座りこみいったい何分、何時間たっただろう、腫れた目で時計に目をやると、もう昼の1時になっていた、何度も夢でわないか?、あのドアから誠が帰ってくるのでは?と考えているうちに、誠が部屋を出ていってから2時間も過ぎていた。壁にもたれながら柚華は立ち上がり椅子に腰掛け、まだ涙が止まらない、頭の中には何故?二人が別れなければならないか理由探しでパンクしそうだ、考えれば考えるほど理由など見つからず、ただ涙だけが溢れてくる、自分の中で誠の存在がこれ程大きいものだった事を涙の数が証明している。柚華はテーブルの上の誠が置いていったいチケットに目をやる、チケットは京王プラザホテルの特別ディナー招待券だった、日付は今日のものだった、チケットの裏に何か文字が書いてある、誠の書いた文字で今夜9:00に待ってる愛する柚華へ。と書いていた、ほんの数時間前に一方的に別れを切り出し説明も何もしないまま部屋を出ていった男の最後の手紙が愛してる、柚華にはまったく理解できない、しかしこのまま訳も判らず別れてしまうのはきっと一生後悔するに違いない、柚華は自分の中で一番のオシャレをして、夜京王プラザホテルに行く事を決意した、例えそれが最後の晩餐になろうとも、もう一度、誠に会って直接聞きたい、私を今まで本当に愛していたのか、柚華の体に少し力が戻った気がした、夜までは、まだまだ時間がある、とりあえず目の前にある食器でも片付けようと、台所に立ったとき、玄関のチャイムが鳴る、誠ならチャイムなど鳴らす訳がない、自分の部屋だから当たり前の事だし、しかし今まで誠の部屋に柚華がいる時に急な来客など一度もなかった、ピンポ~ン、ピンポ~ン何度もチャイムが鳴る柚華は玄関のチェーンを掛けたまま鍵を開けた、『はいどちら様ですか?』玄関の隙間から表を覗き込むと、3人の男が立っていた、男は『まことさんいますか』と尋ねてきた、しかし少し言葉がオカシイ、どうやら日本人ではないようだ
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