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‡01 空っぽ
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「だから、ヤだって!」
「冷たいこと言うなや。一緒に遊ぼうや、なぁ。」
深夜、仕事帰りに、柄の悪い男に絡まれた。
「ホント、無理だし。とにかく離して!」
掴まれた手首を、必死に振り解こうとしていた時だった。
「オッサン、見苦しいな。離したれよ。」
遠巻きに見物している人達の間を割って、彼は現れた。
「ッんじゃ、こるぁ!どこのクソガキじゃ!」
男が怒鳴った瞬間だった。
気付けば目の前に、男の頭髪を鷲掴みにした彼が立っていた。
「この手ぇ離したら、すぐ、ここから立ち去れよ。したら、許したるわ。分かったか、オッサン。あ?」
モデルみたいな外見からは、想像も出来ないような威圧感と荒い口調。
彼は男に忠告すると、あたしを振り向き、ニヒルな笑みを見せた。
怖さとトキメキが混じり合った複雑な感情で、あたしは、ただ彼を見つめていた。
それが、愛を失したあたしと、傷だらけの彼‥
新城和樹の出逢いだった。
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