序 章

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  朝、自分のベッドで目が覚めた。 激しい頭痛と吐き気。 腹が痛くて、這うようにしてトイレに向かった。 共有スペースのリビングのミニテーブルに置かれた、ビールの空き缶と食べかけの枝豆。端にチョコレートが少しついた銀紙。 彼女が使っていた部屋はとても綺麗に整頓されていて。 でも下着類を含む、見慣れた服の数々はウォークインクローゼットの衣装ケースの引き出しの中に入ったまま。 ベッドの上には縁にフリルのついたハートの枕やクマさんの縫いぐるみが、主の帰りを待つようにいつもの位置で静かにそこに在った。 全てが昨日までと同じ空間に、君だけが居ないというこの違和感。 猛暑日続く真夏の朝。 彼女は突然家出をした。 理由? そんなのわかるわけが無い。 一緒に酒を呑んで、分かりあえたと思った翌朝、 俺は一人でベッドの上。 頭が割れるように痛むから、うまく考えが纏まらない。 .
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