月の目

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と、また二階の扉が開いた。 「帰っちゃやだよ、平井君。 上まで来て。 お母さんはもうどっかいっていいよ」 それだけ言ってまた扉が閉まった。 「あや・・・」 母親はそれ以上何も言えなかった。 眉間に皺を寄せ、僕を見た。 ひどく申し訳なさそうに。 どうやら、主導権は娘のほうにあるらしい。 母親は娘の命令に逆らえないのだろう。 安堵から憂鬱に投げ戻された。 もう腹をくくるしかない。 「渡してきます」 「すみません・・・」 母親は苦しげにうつむいた。
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