月の目

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三輪はノースリーブのワンピースを着ていた。 華奢な背中を長い黒髪が覆っていた。 月光に照らされた三輪の影が、黒い染みのように床に伸びていた。 僕は月の逆光の中で 彼女の肩や首筋をまじまじと見てしまった。 はたと我に返り、恥ずかしくなった。 自分の行動を誤魔化すように、声をかけた。 「電気つけないの?」 「月が見えにくくなるでしょう」 彼女は微動だにせず答えた。 そうだ、 そのまま、 こちらを向くな。
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