月の目

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「忙しいって月見?」 「月は月見ができないよね。 かわいそうだと思わない?」 「かわいそう?月が?」 「私、恋してるの。 絶対叶わない恋を。 月の気持ちが分かるわ。 月は地球に嫉妬してるの。 だって地球は月見ができるんだもの」 「ん?うん・・・」 まるで支離滅裂だ。 「平井君は今、私の背中を見ているわね。 私なんて背中どころか自分の顔も知らないのに」 僕はさっと三輪の背中から目をそらした。 やましいことなど一つもないはずなのに、何を焦っているのか。 あまり余計な会話はしないほうがいいということに気が付いた。 早く用件を済まさねば。 「先生から預かったもの、置いておくよ」 「なに急いでるの」
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