月の目

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「僕も・・・僕には・・・分からない」 言えなかった。僕も同じことを思った、とは。 三輪はまた質問を投げかけてくる。 満月を見つめた姿勢のまま。 「どうして人は自分の顔を見ることができないの。 顔は私のものなのに、他人ばかりが私の顔を見る」 「鏡に映せばいいじゃないか」 言ってから、しまったと思った。 彼女の会話に巻き込まれてはいけない。 きっとろくなことにならない。 「なんで鏡なんて道具を使わないといけないの? それに鏡像なんてちっとも本物と似てないじゃない。 文字を鏡に映して見たことがないの? 本物とまったく違うでしょ。 姿だけじゃないわ、声もそう。 聞いて」 三輪が突然、後ろ手に僕に携帯電話を差し出した。
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