月の目

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突然、彼女が嗚咽をはじめた。 膝を抱き、肩を震わせ、泣きじゃくる。 「どうしたの?」 僕は動揺し声をかけた。 だが彼女は泣くばかりで何も言わない。 明かりをつけたのがまずかったのか? 写真を見られたくなかったのだろうか。 あたりまえだ。 誰にでも人に言えない秘密の一つや二つある。 他人に知られたら自殺したくなるほどの急所を誰もが持っている。 おそらく僕はその急所に触れてしまったのだ。 自分の愚かさを呪った。 三輪は心を病んでいるのだ。 僕はもっと配慮しなければいけなかった。 配慮どころか、同情の一つもしていなかった。 彼女はクラスメートなのに。
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