月の目

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彼女はもう一ヶ月近く高校を休んでいる。 その間たまったプリント類を彼女に届ける役目を、 今朝突然、担任に言い渡された。 理由は理不尽極まりない。 今日、僕がたまたま日直だったから。 「部活があるから」 と断ったら、 「部活が終わったあとでいいから」 と言われた。 なにが「いいから」だ。 と、内心毒づいた。 先生が行けばいいじゃないか。 そばで聞いていたクラスメートたちが好奇の目を僕に向けた。 「平井、まじで行くの?」 「しょうがないだろ」 「明日、どんなだったか教えろよ」 僕は偵察係か。 他人事だと思って。 だが彼らの気持ちが分からないでもない。 僕だって、三輪の家に行くのが僕以外の誰かだったら、興味津々で明日の報告を楽しみにしているところだろう。 彼女の休む理由を、先生はただ病気のためと言っている。 だがそれが「心の病気」であることは、皆知っていた。 なんでも噂では、 彼女は一ヶ月前・・・。
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