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いや、
やめよう。
ますます気が滅入るだけだ。
それでも僕は、彼女の家に行かねばならないんだから。
先生にもらった地図を、月明かりを頼りに確認しながら歩いた。
駅前を過ぎると、途端に人通りが減った。
夜がずんと深まった感じがした。
見える範囲に店らしきものはない。
住居だけが所狭しとずっと立ち並んでいる。
夜の住宅街は静かで冷たく、重苦しい。
家とは秘め事を隠す場所なのだ。
家々の無言が僕を圧迫した。
それらは僕を警戒し息をひそめているようだった。
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