月の目

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三度チャイムが鳴ったところで、 母親が出た。 「はい」 怯えたようなか細い声だった。 そのか細さに、逆に僕が怯えさせられた。 「夜分遅くすみません。 絢子さんと同じクラスの平井と申します。 学校の配布物を届けるように金子先生に言われて来ました」 「まあ・・・わざわざありがとうございます。 ちょっと待っててくださいね」 いくぶんか和らいだ声にほっとした。 玄関のドアが開いた。 「こんばんは」 三輪の母親がこうべを垂れた。 僕もおじぎをした。 母親の顔には、見て分かるほどの疲労が刻まれていた。 長すぎる髪を一つに束ね、化粧はしているのかしていないのか、ノーメイクに近い。 青白い肌に青白い唇。 本来は美しい人であることは予想できた。 そして美しい人がやつれると、こんな凄惨になるのだと知った。 そういえば三輪絢子も美しい少女だ。 一ヶ月前のことがなければ、今でも男子生徒達の憧れでありつづけたはずだ。
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