月の目

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「どうぞ上がってください」 母親は僕を玄関に招き入れた。 彼女は吹き抜けの階段の下で、上に向かって声をあげた。 「絢子、お友達よ、あなたのクラスの平井君。挨拶なさい」 階上から答えはない。 「絢子」 しばらくして二階のドアが開く音がした。 三輪の声が降ってきた。 「ごめん、今忙しいの。 平井君、上まで来て」 「何言ってるの!降りて来なさい」 ばたん、とドアが閉まった。 あとは沈黙。
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