迷えるF/序章の足音

2/6
92人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
ここは風の町…風都。 巨大風車型の塔、風都タワーがシンボルの町。だが、いま風都タワーは工事の最中だ シンボルのない町はどこか寂しい風が吹く―― 「おりゃ」 パンッとスリッパの乾いた音と衝撃で青年は我に返った。 「なにすんだ、亜樹子!」 「いつまでそうしてるのよ翔太郎君!何か考え事?」 亜樹子と呼ばれた女性は強気に言い放つ。結った髪と手に持つ緑色のスリッパが印象の女性だ。 「別に何でもねえよ」 翔太郎と呼ばれた青年はそう吐き捨てると、ドカッと椅子に座る。ハットの似合う青年だ。 「二人だと…やっぱしっくりこないなと思ってよ」 「…うん。もう半年になるんだね…フィリップ君がいなくなって」 二人の言うフィリップとは、半年前に地球の持つ情報のひとつとして吸収され消えてしまった翔太郎の唯一無二の相棒である。 コンコン 突然、だが静かに鳴海探偵事務所の扉は叩かれる。 今日はどんな依頼だろうか。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!