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「ふふ…今日で百回目だよ確か!」
「よぉ~紀恵(きえ)!」
茶色の長髪を靡かせながらふふふと笑う紀恵は端からみたら清楚そのものである。
「また追いかけっこしてるの?」
「あのじゃじゃ馬なかなか早くてな…いやまだ俺が本気だしてないだけだ!」
ガッツポーズを繰り出して、廉は闘志を燃やす。
「ふふ…その言葉もう百回目だよ?」
「う…そうだっけか…?」
それを言われると言い返せない廉である。ひゅるひゅると闘志が冷めていく。
「もうちょっと何だけどな…」
「ふふ…その言葉も百回目だよ!」
撃沈である。
「……」
そして微妙に百合の表情がむすっとしているのは誰も気付かなかった。
「あ、そういえばもう少しでチャイム鳴っちゃうよって言いに来たんだ!
急がないと遅刻しちゃうよ?」
「何だと!?また捕まえられなかった…」
廉はどよんとした空気を体から発するが、晃二はそれを見て呟く。
「毎度毎度落ち込んで…」
「…よし!明日こそは!」
「毎度毎度数秒で立ち直るんだよなこいつ…」
本当に後悔してたのだろうかと思う程廉は立ち直りが早い。
晃二は溜め息をつく。
「貴様などに捕まるくらいなら死んだ方がマシだ」
「何だと!?」
「はいはい追いかけっこはもうおしまいだぜ!」
「離せ晃二!今日こそは~今日こそは~!」
「はいはい愚痴は教室で聞いてやるぜ」
廉の襟を持ってずりずりと教室まで連れて行く。
「じゃあ雪見さん行こ?
急がないと授業遅れちゃうよ」
「そうだな…早くしないとはげ矢寒そうに怒られるな!」
「はげ矢寒そうじゃなくて半家矢左夢蔵(はけやさむぞう)ね…」
「そうだったか?」
百合は本当に覚えてないらしく真顔で聞いてくる。
「あはは…良い加減覚えてあげなよ」
苦笑しか出来ない紀恵であった。
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