STEPⅠ

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私、千乃苦無はせめて人並みの生活を心掛けている。 肘の下にある、シワになってしまったA4用紙を上着の内ポケットにしまって立ち上がる。 「・・・行くのか?」 「あぁ。あまりゆっくりしていると私はダメになる」 腕時計以外に持ち物は無い。 安物ホテルの会議室に持って行くほどの物は、他に持って無い。 「今日の内容、分かってる?」 「何年目だと思ってる」 月末の収集は来週の生存権の説明と決まっている。 「・・・さーせんさーせん。」 「んじゃ、さよなら」 会話は続きそうだったが、私は振り返らず、後ろ手に軽いドアを閉じた。
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