0人が本棚に入れています
本棚に追加
私、千乃苦無はせめて人並みの生活を心掛けている。
肘の下にある、シワになってしまったA4用紙を上着の内ポケットにしまって立ち上がる。
「・・・行くのか?」
「あぁ。あまりゆっくりしていると私はダメになる」
腕時計以外に持ち物は無い。
安物ホテルの会議室に持って行くほどの物は、他に持って無い。
「今日の内容、分かってる?」
「何年目だと思ってる」
月末の収集は来週の生存権の説明と決まっている。
「・・・さーせんさーせん。」
「んじゃ、さよなら」
会話は続きそうだったが、私は振り返らず、後ろ手に軽いドアを閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!