涙の行方を捜す

4/4
前へ
/4ページ
次へ
俺を振り回すだけ振り回していった影山も、今まさに俺を振り回し続けている不動も。そして結局は俺も、寂しさを埋める為に歪んだ愛情表現ばかりを与える。今の不動は別として。 「なあなあ鬼道クン」 降り注ぐふざけた名前の言い方と、イントネーションは何があっても変わらないようだ。 「泣きたいなら泣けばいいだろうが」 涙を流す方法なんて忘れてしまったと言えば、不動はなんて言うだろう。そしてその考えを口に出すことも、ましてや不動の意見をを実行しようなどということはもう――。 「……ああ。そう、だな」 そうつまり、俺は泣いていなかった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加