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意味深な笑みを浮かべ、またツカツカと歩を進める木嶋。
右も左も分からない新人社員が社内を案内して貰っているかのようなやり取りで、俺はひたすら木嶋の後を追う。
ギィッ。
割と大きめの重そうな扉を、木嶋がゆっくり開ける。
途端に、よく通る声達が張り詰めた空気の圧力と共に自分にぶわっと押し迫ってきた。
「アハハハ。
何?
よくそんなこと言えるわね、今更」
「本気なんだ。
はぐらかすなよ」
「男っていつもそう言うわ。
騙されてあげてるこっちの身にもなってちょうだい」
狭い映画館みたいな作りのホール。
その一番奥の列のちょうど真ん中に木嶋は歩いて行き、慣れたように座って足を組む。
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