第1章 始まる日常、動き出す影

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午後11時。 この冬霜町(フユシモチョウ)の一角の民家の屋根の上で座っている人物がいる。 金色の髪と黒いコートが特徴的な男だ。 「…おや、来たみたいだね。」 男が真っ黒な空を見上げると、突然空からなにかが落ちてくる。 その何かは、黒い翼を広げ男の横に降り立った。 黒い髪…そして座っている男と同じコートを身に纏っている男が。 「蒼夜(ソウヤ)、遅かったね。」 「…悪かったな、湊(ミナト)。」 蒼夜と呼ばれた人物は、湊と呼ばれた人物に謝罪するが、悪びれる様子もないまま湊の隣に立った。 「座っても良いんだよ?」 「いい、長居するわけじゃないからな。」 「相変わらずつれないね君は…。まあ良いか、先輩としてこれだけは言っておくよ。必ず対象を連れ帰ること…良いかい?」 「ああ、任務は必ず遂行する。」 「その意気だ、いざという時は僕もサポートするからよろしくね。」 「ああ…了解した。」 そう言い蒼夜は翼を広げて夜空に向かって飛翔する。 湊はしばらくの間、蒼夜の姿を見送っていた。 「さて…今度の対象はどうかな?」 蒼夜の姿が完全に見えなくなった後、湊は呟くように言葉を紡いだ。 視線の先には一件の民家。 その民家の窓から見える一人の少女が今回の標的。 「…一ヶ月生き残れば上等だね。」 不吉な言葉を残し、湊も翼を広げて夜空に消えていった。
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