2人が本棚に入れています
本棚に追加
原点に帰る事の大切さを再確認していた男セキデンはそれでも今日は苦悩していた。趣味とはいえ仕事以上に心技体を以てして取り組む週に一度のBC(バッティングセンター)での一時…。理想と現実、王者像と打球操作…やはりそれら全てを重ね合わせる作業は困難を極めていた。…その狭間で抗う術を見出す事ができない彼もまた所詮一固の人間。時折のインターバルでのBC店員ロデム(友人でもあり夜はラーメン屋さんをしてる)との言葉(ハート)のキャッチボールに心身の癒しを覚えながら、ロデムとBCオーナーの勤務交代の時間が刻々と迫ってきた午後2時前…。オーナーの車が到着…そして足音…その一足一足の音が数々の彼との物語(バトル)を思い出させる。その記憶と感覚が身体に蘇った瞬間…「行ったろうっ!」心で叫ぶ。易しく打ちかえされた直径7㎝の白球は何の迷いもなく直径18㎝の穴へと吸い込まれていった(スポ!)。その瞬間、去年の安易に考え引き受けたテレビ出演での不本意な内容が脳裏をよぎる。網に収められたその白球が『だから言ったろう?』と言わんばかりに説教にも似た表情で彼を見下ろしている、そんな気がした。「行ったろう」と『言ったろう』…恥ずかしげに後ろを振り向くセキデン。微笑むロデム。無表情のオーナー。第310号達成……
いつもどうすれば達成できるのか?…でも分からない、未だ解らない。理想と現実、予想と結論。きっとその答えは永遠に解明することができず、そして永遠に探し求め続けていくのだろう。引退するその日まで。ただ分かっている事はあの安西先生の言った『諦めたらそこで試合終了だよ』…とアスリートにとっての必然の義務意識。310度目の賞金を財布にねじ込んでBCを後にするセキデンは「まぁあんまり考えてもしょうがないわなぁ、とりあえず今晩何食べようかなぁ」と意識をオフモードへと切り替えた。すると空腹感からか、どこからともなく『テレレ~レレ テレレレレレ~🎵』ロデムの絆ラーメン屋台の音楽と、同時にスープの香りが漂ってきたような気がした…。セキデン
最初のコメントを投稿しよう!