やはり

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やはり

…俺は間違ってはいなかった。先日の余韻を残し、仕事帰りにBCに寄るセキデン。今日の定時が16時半という事もあって、夕方少しのんびり打てるかな…と彼は思う。煙草を一本ふかし約30m先のターゲット(的)を見つめる。今日の獲物は16㎝の穴。慌てて定員(ロデムではない)がピッチングマシーンへと駆け寄る。球筋を低く設定しようとしている。フッまぁいつもの事か…煙草の火種がフィルター2㎝近くになったのが合図だ。スイッチがオフからオンへと切り替わる。淡々と打ち始める。最初は今日の身体と意識の感覚…ただいつものように淡々と打ち続ける。余程の事がない限りボールを打ち損じる事はない。そしてそこからだ。いかにしてあそこへ打球を操作するか。ありとあらゆる技術を駆使して打球を操作しようと試みる。まぁこれもいつもの事だ。でも今日は何かが違っていた。プロ野球選手が「無心で打った」とかいうのをよく耳にする。無心?…いやそうじゃない。無欲?…これでもない。言葉では言い表せ憎い。ただ直径7㎝の白球だけは答えを解っていたかのように16㎝の穴を通過し網に収まった(スポ!)。第311号達成の瞬間だった。無言で賞金を受け取りに行くセキデン。顔を真っ赤にして無言で賞金を差し出す定員。そして無言でBCを後にするセキデン。いったい何なんだろう?…家に辿り着いた彼は心せわしく無言でコップにお酒を注ぐ。注がれたお酒を瞬く間に飲み干す事によって、長年考えている謎を少し解明したと意識づけようとしていた。ただ一つ言える事は『うーん、非常に気色良いっ❗😌😆』…大きく鼻の穴を開き、息を吸い込んで、ニヤついた顔で息を吐き出す男の姿がそこにあった。 セキデン
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