始まりは…

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2人で探し始めても、相変わらず時はイタズラに流れるいっぽうだった。いつの間にか太陽はほとんど沈んでしまった。 お守り、どこにいったのかな。全然見つからない。ランドセルのポケットに入れてたはずなのに、気づいたらなくなってた。お守りに足があるわけじゃないから、勝手にトコトコ歩いていくはずなんかないし。誰かのイタズラ??そんなはずないよね。クラスの人に嫌われてるとは思わないし。まったく心当たりがない。 「久美ちゃん、お守りあった??」 「ない。全然見つからない」 ホントにどこにいったのか。まったく見当がつかない。途方にくれるとはこのことだなって思った。 クワッ。 ふいに音が聞こえた。羽音と鳴き声。 クワッ、クワッ。 カラスが一羽窓の外、闇を背負いながらこちらをジッと見ていた。恐怖が身体中を駆け抜ける。あたしはカラスの目に恐怖を覚える。カラスが凄く冷酷で残酷な存在に見えてくる。逃げたら襲われる。そんな気がして、足が恐怖でまったく動かせない。 1人と1羽の間に沈黙が流れる。長い長い沈黙。あたしには永遠に感じられたほど長い沈黙。やがてカラスは静かに飛び去っていった。なんの為に来たのだろうか。 膝から力が一気に抜けた。うっすらと涙で視界がぼやける。本当に怖かった。ついてない日は、とことんついてないみたいだ。ましてや、おばあちゃんに貰った大事なお守りを無くしたんだから……
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