深い霧 温かい声

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「まず……」 「待って!!」 先に知りたいことがあった。 「あなたのことを先に教えて」 「私のこと??」 彼女は一瞬だけ沈黙した。 「そうね……。あなたは私を知らないと言ったよね??」 「うん、あたしはあなたを知らない。嘘じゃないよ」 「嘘じゃないのは分かってるわ。けど私はね、あなたがよく知ってる存在なの。ただあなたは、私の姿も声も知らなかっただけ」 姿も声も知らない。けどあたしは知っている……。駄目だ、全然思いつかない。 「だけど私は、あなたの姿も声も知っているわ。だって毎日あなたを見守っていたもの」 まったく分からないし、まったく思い出せない。なんだか思い出そうと必死になると逆にボーッと頭がしてきて、ますます思い出せなくなる。 「あなたは私を知っている。それは間違いない。ただあなたには、私の姿を見る方法も、私の声を聞く方法もなかっただけなの」 「どうして??」 「それはあなたが、生きていたからなの。普通、私の姿も声も生きてる人が知る方法はないの」 言葉の違和感に気付かなかった。 「生きてたら見れない……??あなたって幽霊みたいね。だって幽霊は私には見れないもん」 彼女が笑ったのが伝わってきた。もちろん馬鹿にしたような笑いじゃない。 それだけは分かる。 「私は幽霊じゃないわ。けど、あなたからしたら似たようなものかもね」 「幽霊みたいなものかぁ……天使様とか??」 あたしはふざけて言ったんじゃない。大真面目に考えて答えたたんだ。 「だって天使様も幽霊と一緒で、私には見れないもの」 「うふふっ」 彼女は心地好い声を出して笑っただけ。 何も答えなかった。
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