153人が本棚に入れています
本棚に追加
「まず……」
「待って!!」
先に知りたいことがあった。
「あなたのことを先に教えて」
「私のこと??」
彼女は一瞬だけ沈黙した。
「そうね……。あなたは私を知らないと言ったよね??」
「うん、あたしはあなたを知らない。嘘じゃないよ」
「嘘じゃないのは分かってるわ。けど私はね、あなたがよく知ってる存在なの。ただあなたは、私の姿も声も知らなかっただけ」
姿も声も知らない。けどあたしは知っている……。駄目だ、全然思いつかない。
「だけど私は、あなたの姿も声も知っているわ。だって毎日あなたを見守っていたもの」
まったく分からないし、まったく思い出せない。なんだか思い出そうと必死になると逆にボーッと頭がしてきて、ますます思い出せなくなる。
「あなたは私を知っている。それは間違いない。ただあなたには、私の姿を見る方法も、私の声を聞く方法もなかっただけなの」
「どうして??」
「それはあなたが、生きていたからなの。普通、私の姿も声も生きてる人が知る方法はないの」
言葉の違和感に気付かなかった。
「生きてたら見れない……??あなたって幽霊みたいね。だって幽霊は私には見れないもん」
彼女が笑ったのが伝わってきた。もちろん馬鹿にしたような笑いじゃない。
それだけは分かる。
「私は幽霊じゃないわ。けど、あなたからしたら似たようなものかもね」
「幽霊みたいなものかぁ……天使様とか??」
あたしはふざけて言ったんじゃない。大真面目に考えて答えたたんだ。
「だって天使様も幽霊と一緒で、私には見れないもの」
「うふふっ」
彼女は心地好い声を出して笑っただけ。
何も答えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!