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「ねぇ、天使様なの??」
「さぁ、どうでしょうね」
「ねぇ、教えてよ」
あたしは子どもが親に玩具をねだるように言った。
「ねぇ、教えて」
知りたいのだ。知らないことがあると、知りたくて堪らなくなるんだ。
「ねぇ、お願いします」
別に彼女が誰だろうが、そんなに大した問題じゃないはずなのに知りたくて知りたくて堪らなかった。けど彼女が教えてくれないということはなんとなくだけど気配で分かった。
首を横にふっている姿が
目に浮かぶようだ。
「どうして……秘密にするの??」
ふいに涙がこぼれた。
秘密は嫌いだ。秘密にされると、胸のあたりがムズムズして嫌な気分になる。
秘密にされると、嫌われてるみたいな気がして悲しい気持ちになる。
「泣かないで、久美」
柔らかい、なだめるような口調で言われた。彼女に言われるとなぜだかすぐに心が落ち着いた。
どうしてなんだろう。あんなに悲しい気持ちだったのに、今は全然悲しくない。凄く変だ。
「そう、それでいいの。私が誰かなんて、今久美が知るべきことではないわ。けど後でちゃんと教えてあげるから、今は我慢してね。別に意地悪をしてるわけじゃないのよ。だから悲しまないで」
「うん……」
今すぐ知りたいって気持ちがなくなったわけじゃないけど、さっきみたいに悲しいとは思わなかった。
「あなたには、言わなければならない大事な事があるの。それを言うために私は来たのだから」
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