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夕日が差し込む教室の中に、ガサゴソと動く影が1つ見える。
その影は何かを探しているようで、机やランドセルの中身を出したり入れたりを繰り返しながら、今にも泣きだしてしまいそうな、そんな声を出している。
「ない、ない、ない!!どうしてないの!?なんでなの!?」
声は教室中に響きわたり、廊下にまで響いている。
「久美ちゃん、どうしたの??」
廊下の方から声が聞こえた。
久美ちゃんと呼ばれた影……つまりあたしは廊下の方に目を向ける。その視線の先に、髪を肩くらいまで伸ばした、綺麗な女の子が立っていた。
「絵美ちゃん…」
絵美とは逆でショートカットのあたし。今にも泣きだしてしまいそうな声が自然と出てしまう。焦りと恐怖で心が掻き乱される。
「どうしよう…」
絵美は、心配そうにあたしのそばにゆっくりと近づいてくる。一瞬、絵美の目に笑みが走った気がしたけど、たぶん気のせいだ。絵美は、人の不幸なんかで絶対に笑わないはずだから。たぶん……。
「どうしたの、大丈夫??」
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