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「御守り、結局見つからなかったね…」
「うん…」
二人で肩を落としながら、家へと向かって歩いていた。ただ少しゆっくり帰りたいあたしたちは、いつもは通らない道を歩いていた。
道は暗く、月が妖しげに空を照らし、久美ちゃんたちを照らす。そして、冬へと変わりゆく秋の冷気が二人を包み込んでいた。
道の両脇には一軒家が建ち並んでいる。なのに家から人の気配が感じられない。どうしたのだろうか。まだ7時過ぎだというのに、寝てしまっているとでもいうのだろうか。なんだか違和感というか、ちょっとした恐怖を感じてしまう。
「寒いね…」
絵美ちゃんが、ぽつりと呟く。
「うん…」
絵美ちゃんよりもさらに小さな声でぽつりと返事をする。風が吹けば消えてしまいそうな声だ。
あたしが凄く落ち込んでるいるから、元気付けてあげようとしているのか、絵美ちゃんは明るく振る舞う。
「元気だして、久美ちゃん。もしかしたら家に忘れてきただけかもしれないよ!?」
「駄目なの…」
聞こえるか聞こえないか分からないような声で呟いた。
だけどその言葉は、しっかりと絵美ちゃんの耳に届いていたのだった。
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