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「どうして??」
絵美ちゃんは久美の方を見たが、そこにあたしの姿はなく、ただ夜の闇が広がっていた。
「久美ちゃん!?」
慌てて後ろを振り向いた絵美ちゃんと、細い道の交差点に、俯いたまま立ち尽くしているあたし。
「久美…ちゃん??」
今にも夜の闇に呑まれてしまいそうなほど脆い存在に見えたあたしに、絵美ちゃんは一種の不安や危機感を感じた。
「駄目なの…。絶対になくしちゃ駄目なの…。ずっと持っていなきゃ駄目なの…だって…だって!!」
あたしがその続きを言おうとした瞬間、ドンッという鈍い重い嫌な音が空に響いた。あたしの身体中に強い衝撃がきた。ライトを点灯していない車が猛スピードであたしとぶつかり、あたしの身体の下を通り過ぎていくのを空高く跳ねあげられながら見た。
あたしは月を背に華麗に舞った。まん丸の満月を背に舞った。散る桜の花びらのように舞った。その姿は、死に限りなく近い存在。
あたし……死ぬのかな……。けど今のあたしは限りなく自由だ。まるで鳥みたいに空を自由に舞っている。重力にさからってあたしは舞っている!!
しかし無情にも、地球の重力は絶対なる力であたしは地面に引きずり落とされた。グシャッという音が夜の闇に響き渡り、強い痛みと衝撃と共に地面に叩きつけられた。壊れてしまった人形のように、身体は動かない。ぼやくた視界の中に、ひじが2つに増えた腕が見えていた。
薄れゆく意識の中で、「私のせいだ…」という絵美ちゃんの声を確かに聞いた気がする。けどその時はまだ、その言葉の意味は分からなかった。
ただ激しい痛みを身体に感じながら、意識は闇に呑み込まれていった…
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