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暗い夜だった
冷たい雨に濡れた古い建物の壁に身体を寄せ、座り込む
らしくなく荒れた息を堪えながら、手の中にある冷えた銃を握り直した
―俺は何をしている―
―お宝までもう少しだったのに…―
失敗したのだ
ミッションに
だが何度考えてもわからない
なぜ
なぜあの瞬間自分は迷ったのか
失敗したという現実は
こうして不様にも路地裏に追い込まれ
濡れた道に這いつくばる己れが嫌という程理解していた
だが、ミスを犯した自分の行動には到底納得出来るものではなかった
自問自答を繰り返しながら路地へ身を潜めて暫く…
気が付くと、先程まで離れなかった追っ手の気配が消えていた
降り止まぬ激しい雨が追っ手の目を誤魔化してくれたのか
またはこの情けない姿に苦笑し、踵を返したのかはわからないが…
口唇の端を歪めるように上げて、笑う
銃を懐に戻し、雨に打たれるまま立ち上がった
普段の自分なら耐えられないだろうが
顔にについた泥を拭う気力もない
重い身体を引き摺る様に歩き出した
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