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その頃の私は、一人で散歩をするのが好きでした。
友達作りも下手でしたし、一人の方が好きでしたしね。
そして、決まって行く場所がありました。
自宅の横道を山手の方へ行くと、古い踏切を渡り、少し蛇行している一本道を登って行くと、一軒の…そうですわね、雑貨屋さんかしら…?本当になんでも置いてあるんです。
調味料、お菓子、雑誌…そして、不思議な事に、豆腐、少しばかりの野菜、そしてお刺身までも!
まだ、コンビニのない時代でしたしね。
その、店を通り過ぎてまだ真っ直ぐに歩いて行くと、道が二手に別れていて、向かって左へ行くと道も広くなり、中規模な神社へ行く道に繋がります。
その、神社の夏祭りが楽しみの一つだったんです。
母が浴衣を着せてくれて、手を繋いで…金魚すくいや、輪投げにワタアメ…焼きそば、タコ焼き…色んな夜店が並んでいて…楽しい思い出の一つですわね。
でも、私がいつも行く道は反対の右側の道なんです。
左側と違って右側の道は、どんどん狭くなり行き止まりになります。
その右側に、小さな空き地があって、また小さな祠がありました。奉っているのは、お狐様です。
祠の左右には、狛犬の如く御影石で作られた狐が、祠を護るように鎮座していましたから。
その場所は、どんなに晴れていても薄暗く、肌寒い場所でした。
私は、その場所が嫌だったんです。正直私にとって薄気味悪く、怖い場所だったんです。
言いたい事は解ります。だったら何故、毎日のように祠に行ったのか?
本当に何故なんでしょうね…怖くて空き地には入れずにいたのに…気がつくと空き地の前に立っている…。
この祠に奉られているお狐様は、私にとって何なのか?
えぇ…解る日が来ました。
はい?台所の音の事ですか?ご心配なく…お狐様の事も、台所の音の事も全て関係していましたから。
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