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あれは、まだ私が幼い頃…確か2~3歳ぐらいです。家庭の事情で、私は赤ん坊の頃から四国の山深いある村に預けられていました。
本当に、四方八方が山で…廃村に近い所だったような気がします。
そこで、父方の祖父母と暮らしていました。
今、思えば祖父母の暮らしも楽ではなかったでしょう。
二人は年老いて、小さな畑に僅かばかりの野菜育て、日々の糧にしていたようです。
祖父は昔かたぎの厳しい人だった。祖母は反対に優しかったのを覚えています。
家は…木造の平屋で、思い返せばよく雨、風にたえていた、と思う程の家でした。
私は…怖かった。
あっ、いえ、今にも崩壊しそうな家が怖いわけでなく…あの家に居るものが怖かったのです。
アレは、昼間はいない…夜になり、祖父母が寝付くと必ず私の所に来るのです。
毎晩、毎晩…真っ暗な部屋の隅から、闇に紛れて這い出してくる…。そして、聞こえてくるのです。
シュ~ヒィ~、ヒィ~ヒィ~…シュ~、と。
幼い私には、それが何の音なのか解るはずもなく、ただひたすら目を固く閉じ、耳を塞いでいました。
えっ?祖父母ですか?
同じ部屋で寝ていましたが…アレは何故か私の所に来るのです!
闇に紛れて、私の足元に、私の枕元に!不気味な音をたてて!
それに…何故か、側で寝ている筈の祖父母がいない気がして…
私とアレしか、この部屋にはいない…訳もなくそう感じていて、余計目を開ける事が出来ませんでした。
だって、目開けて本当に居なかったら…
怖くて、怖くて…
いつの間にか私は眠り、朝を迎えていました。
不思議な事に、朝になると全ての恐怖感が消えているんです。
ですから、祖父母にアレの事を話した事はありません。
えっ?まだ終わりではないですよ。
続きは後で。少し休憩しましょう。
お茶、冷めてしまいましたね。コーヒーにしますか?眠気覚ましに。
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