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ヒィァ~(オ…タベ)
アレは、聞き取りにくいカスレた声で、その赤い物を私の口元まで、差し出してきた。
(たべたくない!たべたくないよ~)心の中で、泣きながら叫んでるのに…どうしてか、私の唇が少しずつ開いていくのです。
(やだ…なんで…たべたくないのに…)
私のそんな気持ちとは、反対に唇は大きく開いて行きました。
そして、アレは私の口の中にあの赤い物を入れてきた時…(………!!)
誰かが叫んだと、思った瞬間
ギヒャア~!!ヒィァ、ギャァ~!!
アレの悲鳴と、同時にアレはのけ反り悲鳴なのか、あの不気味な息づかいの音なのか分からない声を叫びながら、暗闇の中もがき苦しんでいるようでした。そして、暗闇の中アレと違う何かがいたのです。
えぇ…やはり姿は見えません。ですが確かにいたのです。ですが、アレとは違って不思議と怖さを感じませんでした。
(だ~れ?)心の中で言ったのか、口から出た言葉なのかは、今だ解りませんが、アレと違うものは、静かに私の方にやって来て、そっと優しく私の頭を撫で、消えていきました。いつの間にかアレもいなくなっていました。と、同時に暗闇が薄れ周りを見る事ができましたし、身体も動くようになっていました。
部屋からいなくなったと思った祖母も、ちゃんと隣で寝ていました。
私は、すぐに祖母のフトンに潜り込み、いつの間にか深い眠りに入っていったのです。
朝起きて、寝ぼけながら夢を見たのかなぁ?怖い夢…祖母は土間で朝ご飯の仕度をしている。
目を擦りながら祖母の元に行くと、(今日からは、おかぁさんの所に行くんだからね…)と言いながら、振り向いた瞬間、祖母はそれっきり何も言わず、立ちすくんでしまいました。
唇はワナワナと震え、目からは涙が…。
驚いた私は、何も言えずただ立って祖母を見ていました。
祖母は泣きながら私に近ずいて、ひざまつき薄汚れた前掛けで私の口元を拭きはじめたのです。
(ごめんなぁ…許してなぁ…)と、震えた声で何度も謝りながら、私の口元を拭くのです。
私が話しかけようとした時、祖母は後ろを向きかけていて、口元を拭いていた前掛けが、少し薄赤くついていたのを見たのです。
(夢じゃなかったのかなぁ…)でも、幼い私は祖母にどう話していいか解らず、そして何故か怖かった。
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