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私は彼の顔を見つめたまま返事を忘れていた
「えぇっと…そのっあのっ…!」
返事に焦った私は言葉を詰まらせてしまったが、彼はにっこりと優しく微笑んでくれた
(やっぱり可愛い…)
「くすっ。大丈夫?君白薔薇寮?送ろうか?」
クスクスと可愛げのある笑い方で彼は笑い、まるで紳士のように私に介錯した
彼の振る舞いに思わずドキッとしたが私は赤薔薇寮だ
「あの、私は赤薔薇寮なんです…。」
その瞬間───…
「帰れ!!!」
ビクッと反射的に肩を震わす私
ついさっきまで温和な雰囲気を漂わせていた人から出た威圧感とは思えないほどの圧力
先ほどの教師といい、この人といい、赤薔薇寮という単語に異常な程の反応を見せる
…帰れるなら帰りたいとすら思えてきた
「…っ。ごめん」
いつまでも反応を見せずに肩を震わせていただけの私に、彼は少し俯き一言呟いた
「い、いえ…大丈夫ですけど…。
どうしてですか?」
おずおずと、弱々しく私は尋ねた
何故だか彼は拳を震わせていた
「…それは言えないよ…。ごめん。本当にごめんね。」
(言えない…って…絶対何かある…!)
無理強いをしてでもその何かを聞きたい衝動にかられるが、謝り続ける彼に申し訳無くてやめた
「大丈夫ですからもう謝らないで下さい」
一歩近付く私に彼は逃げるように私から遠退く
「違う!違うんだ…これから…これから何も知らない君をもっともっと深く傷付けてしまうんだ。だからごめん。」
「え…?」
先を見つめる彼の瞳は涙に潤んでいるように見えた
私が更に彼に一歩近付こうとした瞬間、彼は走り去った
これからの私に謝る彼
言えない何かがある寮
帰りたい気持ちが段々と膨れ上がり気持ちが悪くなってしまった
(…吐きそう…)
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