怪盗ガーベラ 妖艶に笑う

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 都内某所にある高級クラブ『スナック 蘭』。  その店内で、一際高貴な香りを放つホステスの姿があった。  ブロンドに輝く髪、潤いが輝くルージュ、そして、その左肩には薔薇の刺青。  身に纏うドレスこそ地味なものではあるが、それが一層彼女の美貌を引き立てていた。  そして今日も、彼女は寂しい男達の癒しの華となる。  だがそれは、彼女の『表』の顔でしかなかった。  また一人、彼女を呼ぶ男の姿が見える。  鳥打ち帽子に、薄汚れたトレンチコート。無造作な髪型の下には、猛禽類のような鋭い眼光が輝いていた。 「あーら、毎度いらっしゃいませ~」  そんな身なりの彼でも、いや、『彼』だからこそ、彼女は笑顔で出迎える。  彼は涼しい表情で彼女にこう告げた。 「今日も長居はするつもりはないな」 「まぁそんな事言わないで、聞かせてよー、面白いお・は・な・し」  腕を引く彼女に、男は微笑み、こう返す。 「じゃあ、いつものボックス席を頼む。『ガーベラ』」  程なくして男の腕を取り、店の奥に消える二人を、男達は羨望の眼差しで見送っていた。
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