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興味を持つフィルもフィルだが、それに協力した魔物また酔狂と言える。普通はやらないからだ。
その二匹に呆れを感じるスタンだった。
荒野を歩く。遮蔽物になりそうな物はなく、見晴らしの良い景色だ。視界に入るのは赤茶けた大地と枯れた草木だけ。見晴らしが良いということは奇襲を受けないで済む反面、襲う側からも見つけ易いということが言える。
現状では、スタンの目の付く場所には魔物はいない。だからと言って、安心することは出来ない。何故なら、魔物の中には鳥の翼を持った翼竜や翼を持たない地中を生活の場とする地竜などの種類がいるからだ。
時には空から襲撃され、時には地中から襲われることも多々あるのだ。
見えるものが全てではないと言うことだ。
それを踏まえて、スタンは周囲の変化に気を配りながら街へと向けて足を動かす。その時のフィルはと言うと、スタンの頭の上で呑気に昼寝をしていた。
その姿が見えずとも容易に想像がついたスタンは、ちょっぴり憎らしく思えた。
「食事は必要なくても、睡眠は必要なんだってな」
フィルは、なにやら寝言をぼそぼそと言いながら気持ちよく寝ている。
そんな友の姿に、内心憎らしく思いながらもそっと寝かしておこうという優しさもあった。竜の肉を食べる時も、火を起こしたのはフィルが放った炎の吐息<ブレス>だ。
それに、街に入れば人型を作りそれを保つ為に魔力を消費するのだ。それを考慮すると今回は寝かしておこうとスタンは決めた。
前を向く。相変わらず視界に入るのは、枯れた草木と赤茶けた大地の地平線。まだ街の形すら見えない。
目的地まではまだ長い。二人が歩む道も長い。ヒトと魔物の組み合わせ。ヒトと魔物の争いが起こってからは初めてとなる組み合わせだ。
この二人が辿り着く結末は『破滅』か、それとも『共栄』か。
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