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周囲を警戒しながら荒野を越えること数時間経った頃、一つの街が見えた。
街の外縁には、魔物に備えるための城壁が街を囲むように延びており、高さも充分あるようだ。その上、城壁の厚さもしっかりあると推測することが出来た。これなら、魔力を使えない並の魔物の侵攻なら食い止められるだろう。
そんな感想を抱きつつスタンはフィルと共に、観音開きの巨大な扉を潜り、その後ろに控えている引き上げられた落とし格子を越えると、目の前に賑わった街並みを見せた。
「どこも相変わらずだな」
「うんー。でも、ここは他の街とは違う気がするー」
フィルの言葉に、確かにと思ったスタンは、頭の中で街の名前を検索に掛け、瞬時に情報を引き出す。
「貿易流通都市『アレス』か。近隣の都市は基より遥か彼方の都市をも繋ぐ流通の要の一つだ。ここでは主に、食料品や衣類を扱うだったかな?」
「ねー。スタン、スタンー」
「分かった。言いたいことは大体分かったから、はしゃぐな」
それを聞いたフィルは嬉々とした表情を見せた。翼蛇種の時とは違い、人型のフィルは感情が良く分かる。年齢相応の表情を顔に出すからだ。
フィルの人型は、一言で言えば『可愛い』である。外見は、艶のある銀髪に金色の蛇眼を持ち、中性的な顔立ちをした子供だ。ちょっと後ろ髪が跳ね気味なのはご愛嬌としておく。
髪の色は良いとして、その瞳はどうにかならないのかとスタンは聞いたが、返ってきた返事は「無理ー」の一言だった。
詳しく聞けば髪の色も瞳の色も、本来の姿をベースとしているため、変更は出来ないとのことだった。体格などについては、その者の精神状態を反映させているので、フィルは子供の姿になったのだと言う。
「そういや、フィル。お前の性別ってどっちなんだ?」
「うんー? 知りたいー?」
知りたいというより、知っておきたいと言うのがスタンの本音だった。翼蛇種の時は仕方ないとしても、人型の時も顔や体型が中性的なため判らないと言うのが、癪だった。人型になれば性別が判ると思ってた自分が居たからだ。
一人称が『ボク』だったので、今までは雄(オス)と見なして接して来たが、ここに来てそれが揺らぎ始めたと感じた。だから、それをはっきりさせるためにフィルに質問したのだ。
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