壊れた世界 第二章

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 物事に於いて絶対はない。周囲は分厚く高い城壁に囲われ、上空は魔導士に掛けられた淡い黄緑色をしたベール状の結界に護られているとは言え、絶対ではない。  魔物の脅威は、想像を絶するところがある。外の世界を主に旅をするスタンから見ての感想だ。  地中にも対策は施してあるだろうが、城壁は並の魔物に破れずとも、地竜や他の高位の竜の攻撃を受けた場合、崩れる可能性もあった。城壁の他にも、上空を覆う結界も同じことが言える。違うのは、攻撃するのが翼竜ということだけだ。  そんな考えが浮かんだスタンだが、いくらヒトが魔法を使えるようになったとは言え、全ての魔物に勝てるという訳ではない。苦戦だって敗けることだってあるのも事実だ。  だから、魔法が使えない一般市民は、目に見える城壁という形を心の拠り所として、安心感を得ているのではないか、という考えも過った。 「さて、先ずは宿でも探すか。今日はこの街で泊まるから観光はそれからだ」 「ん。分かったー」  太陽はもう西に傾き掛けているのだ。宿で一泊することにした。街の外に出ても気疲れする野宿を味わうのは確実だからだ。  今日は、安心して寝たいと思ったスタンだった。これこそが、城壁の副次的効果だろう。  街に足を踏み入れ、その先にあった市場を抜けると、宿が並ぶエリアに来た。貿易流通都市には、旅人や商人などが多く集まるため、必然的に宿が増えるのだ。  持ち合わせが少ないことを思い出したスタンは、比較的安い宿を探すことにした。通りの左右に建ち並ぶ宿の外見と看板を見ながら選ぶ。  きらびやかな外装の宿や木で構築された木独特の安らぎを目的とした宿、新しいホテルに混じって趣のある老舗の旅館などが目に付いた。  宿を探すスタンに倣うように、フィルも左右に首を振って建ち並ぶ宿泊施設を見ている。スタンは宿を探すためであるが、フィルの場合は外装が様々で、それに興味があるからだろう。
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