壊れた世界 第二章

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 あれから何時間か過ぎ、傾きかけていた太陽が地平線に沈み、漆黒のベールが空を覆った。  フィルは、もうはしゃぐことはなくベッドに座り、スタンを見つめたままその姿勢を保っている。フィルに観察されるが如く見つめられているスタンは、椅子に座りながら天井に視線を向け、手足を投げ出し何をすることなしに沈黙を続けている。  警戒しながら荒野を歩いたため、精神的に疲労が溜まっているのだろう。竜との戦闘もあったのだ。一般人に竜は狩れない。外の世界を行き来する商人さえも、傭兵やギルド員といった魔物と戦える力量を持った人間を雇い、護衛してもらいながら移動している。それでも、精神はすり減り、命の危険まであるような状態なのだ。  スタンは、それを一人でこなしているのだ。肉体的にも精神的にも疲労は溜まる。長いこと放浪しているとはいえ、これだけはどうしようもないのだ。 「ねー、スタン。ご飯食べに行かないのー?」  動かないスタンに向かってフィルが声を掛ける。それを聞いたスタンは、天井からフィルへと視線を移した。 「……あぁ、飯か。てか、お前は食わないだろ」 「ボクじゃなくて、スタンのことー」  要は、フィルは食事を摂らなくても構わないがスタンは必要で、疲れてるなら早く食べた方が良いよ、ということらしい。そう、脳内変換したスタンは宿にある食堂へ行くため、椅子から立ち上がった。  部屋を出る時、フィルに着いてくるか聞いたところ、食べないから行かなーい、と返事が返ってきた。どうするのか見ていると、もそもそとベッドの中に潜り込んでいくのが見えた。  その行動を見た後、スタンは部屋の扉を閉め、食堂へ向かうため廊下を歩き出した。階段を降り、食堂に近づくと料理の香ばしい匂いが漂ってきた。  荒野で食べた竜の焼肉より香ばしい匂いだ。
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