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大地は荒廃し、荒れた茶色の平野。草木は枯れ、全ての生き物に厳しい空間。
かつて、戦争が始まる前は、人が科学を押し進める中、影からその影響を受けつつも緑豊かな平野であった土地は、今では見る影もない。
ここに住まうモノは、この環境に順応した魔物か、限られた僅かな植物しかない。
通る者もおらず、散々とした雰囲気を持つこの平野には珍しく、一人の男がいた。
傍らには魔力を取り込んだ蜥蜴の進化した『竜』の姿がある。
しかし、その鋼色の鱗に覆われた身体は微動だにせず、見開かれた瞳は濁り、口からは血を流しているところを見ると、それは死骸のようだ。
その死骸の側にいた男はしゃがみこみ、火を前にして頻(シキ)りに何かを焼いている。しばらくそれを見ていた男は独り言のような言葉を口にした。
「竜の肉って、固ぇし弾力あり過ぎだ。しかも、焼いても食感が変わらない肉ってどーいうことだよ。まぁ、無ぇよりマシだけどよ」
「文句言うなら食べなければ良いのにー。人間って不便だねー」
その男の独り言に答えるように声が聞こえたが、近くにあるのは竜の死骸のみだ。
「おめー、同族だろ? なのになんでそんな淡白でいられんだ?」
「同族? 酷いなー。同じ魔物だけど、ボクは蛇の進化系、あっちは蜥蜴の進化系だよ。同じ爬虫類だけど違う種族だよ」
「あぁ、そうだったな」
そう話す男の視線の先には翼の生えた蛇が一匹いた。とぐろを巻き、竜の肉塊の上に座っている。
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