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他に生き物が居ないところと先程の言葉から、男と会話していたのはこの翼蛇種のようだ。
男が黙々と肉とにらめっこしてる時、その魔物は一つの問いを口にする。
「でさー、これからどうすんの? 街に行く? それともまた放浪する? ボクはどっちでも良いけど、スタンが決めてー」
そう言われた男―スタン=ラグノーチェフは暫し考える。街に行くにしてもこの翼蛇種という種族の魔物の対処に困る、かと言って放浪するにしても食糧難になる。実際、この状況は放浪の末、食糧難に陥りやむ無く近くにいた竜を狩って食料としたからだ。
考えが纏まると、翼蛇種に向かって今後の方針を告げる。
「街に行こうと思う。フィル、お前はどうする?」
「どうするもこうするも着いてくよー。幸い、人型にもなれる身だしねー。実は」
その言葉を聞いて、スタンは思わず手を止め、目を見開きながら翼蛇種―フィルを凝視する。
「おまッ、それじゃ今までの俺の苦悩は何だったんだよ! 出来るなら早く言えよ!」
「うん。ごめんねー。疲れるからあまりやりたくないんだー」
反省の色が薄い返事だ。それを聞いたスタンは、がっくしと頭を垂れた。どうやら諦めたようだ。
「それよりもさー」
「それよりって、お前なフィル」
「お肉焦げてるよー」
その言葉に、目の前の焼き肉に視線を移すと、そこには炭化しかけて燻っている竜の肉。肉の焦げた独特の匂いが一人と一匹の鼻を突く。
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