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「便利だな。だが、人にはそんな分かれはないぞ?」
魔法を使えるヒトも使えないヒトも共通して例外なく食事を摂っている。昔に聞いたフィルの魔物の話と自分達の話からしても、元は同じ魔力を受けているのだ。この違いは何なのだろうか。
「魔力の濃度かなー。質とも言うねー。魔物が受けた魔力は世界からの直接の贈り物。ヒトが受けた魔力はその余りみたいな魔力だからねー。質が違うんだよー」
「受けた魔力の質の違い、か。成る程」
魔物は壊れた世界から直接、濃い魔力を受け取った。それは身体の構造を強制的に造り変えるほどのものだったそうだ。しかし、ヒトが受けた魔力はその濃い魔力が薄まって拡散したようなものだった為、身体を大幅に造り変えられることはなかったという。
その違いが、食事を摂る種と摂らない種の魔物と食事を摂らなくてはならない種のヒトを造り出したのだと、フィルは言っているのだ。
もし、ヒトがその濃いままの魔力を受けていたとしたら、それは魔物と同義でありながら更に厄介な生物へと変わっていただろう。魔物のような存在で、自らの欲望に忠実な生物『魔人』とも言える存在へと。
そうはならなくて良かったとスタンは内心安堵していた。ヒトがこれ以上、貪欲な存在になっていたらその結末は悲惨なものだと考えたからだ。
スタンはフィルと会話してる間に、腹ごしらえを済ませた。休息も摂った。この荒野から近い街と言えば北北東にある『アレス』という街だろう。そこへ移動することにした。
「おい、フィル。そろそろ街に行く。準備……はないから行くぞ」
「うんー。また頭の上が良いー」
フィルはそう言うと、スタンが何か言う前にスタンの頭の上に飛び乗り、とぐろを巻いて座った。最近は、肩か頭の上がお気に入りらしい。以前は首に軽く巻き付いていた。
「お前な。また頭の上か?」
「うんー? 見晴らし良いから気に入ったのー」
やはり、毎度のことらしい。それ以上、何か言うことなくスタンはその場を離れる。おそらく、いや確実にその場に残っている竜の死骸目当てに寄ってくる魔物がいるからだ。
ヒトには固く弾力のある肉でも、魔物には関係ないらしい。肉食の魔物は、その強靭な顎で噛み砕くからだ。昔、石を投げ込んだら粉々に噛み砕かれたとフィルは言っていた。ちょっと興味があったので、協力してもらって実験したらしい。
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