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この夢を見せている誰かは、自分に一体どうしろというのだろう。総ての始まり、そして、いずれ終わりを導く2人。その2人と自分が同じだと?
少女はかぶりを振り、虹色の光から後退りした。
「私は違う、一緒にしないで」
そう、一緒ではない。2人と自分とでは、この地上で生きる意味が全く違うのだ。
少女は自分の言葉を反芻し、冷めた目で2人を見下ろす。
夢なら、早く覚めてしまえ。こんな夢を見せられたところで、動じはしないのだから。
「それは違うわ」
誰かが言った。正確に言うと、直接脳に響いたといった感じだ。その声は妙に心地好くて、まるで柔肌に触れているような安らぎを与えてくれた。
──聞き覚えがある。この声は多分、きっと……。
少女は声のした方向──虹色の光の更に奥──を見た。
うっすらとしたシルエットは徐々に輪郭を浮かび上がらせ、虹色を挟んだ向こう側にその姿を現す。少女は言葉を失った。
「また逢えたわね」
違う。また逢ってしまった。そう言った方が少女の気持ちを素直に表現している。
実のところ、少女は2人の顔を見た瞬間からこの夢を見せている人物の予想はついていた。が、認めたくなかったのだ。
「母なる大地に、口づけを」
少女は唇を震わせて言った。
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