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恐らく、2人はこれから知ることになる。生まれた意味と、生き続ける理由を。
私は知っている。私が生まれた意味も宿命も、全て……。
涙を拭い、フィーユは「人」から離れて再び跪いた。
夢の中のはずなのに、覚醒しているかのようにリアルな鼓動が、破裂しそうなほどに鳴る。母親に怒られれば、誰でもそうなるだろう。今は正しくそんな状況で、フィーユは何故自分が夢の中に呼び出されたのかを、はっきりと理解していた。
使命を果たすどころか、目標と馴れ合い助けてしまっている現実に、この「人」が黙っているわけがないのだ。
知らなかったでは済まされない。だから、罰を与えられる。死ぬよりも辛い、罰を。
「覚悟はできているみたいね」
フィーユは頷き、母親からの罰を受けるために背を向けた。
虹色の光の中で眠る2人の姿が目に入る。その愛くるしい形、記憶を胸に留め、フィーユはゆっくりと瞼を閉じた。
「さあ、生まれ変わりなさい」
優しく、しかしそれとは裏腹の凍てつく手がフィーユの背中に添えられ、同時に、空気が渦を巻いて彼女のクリーム色の髪が激しくはためいた。
次に目を開けた時は、もう、私は私でなくなっている。多分、この記憶は影に隠れてしまって、もう思い出すことはない。
「ありがとう……さようなら」
誰に言いたかったのか、彼女自身も分からなかった。ただ、渦巻く風が妙に心地好かった。
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