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――気が付けば純白の衣装を身に付けていた。
(……どういうこと?)
とても身体がだるい。動かそうとしても動かなかった。
少しずつ覚醒してきた頭で周りを見て、なんとなく状況を理解する。
真っ白な衣装はウエディングドレスだった。部屋の中にはお祝いのメッセージが添えられた花が所狭しと並んでいる。
(あんのクソ親父……)
身体が動かないのは逃げ出さないために魔法でもかけられたんだろう。
まったく、嫌気がさす。
この境遇にも、父親にも。
「目が覚めたか」
今一番聞きたくない声がする。この世で一番嫌いな人物。
「……どういうことかしら、お父様?」
出来るだけ口端を上げて、わざとらしく丁寧な口調で言う。
父親はふん、と軽蔑するように笑った。
「今更もう遅い。お前は今日今から結婚してもらう。我が一族のために最後くらい役に立ってみせろ」
「……あんたは何を望んでるの。あたしがどっかに嫁いだところで、何も変わんないんじゃない?むしろ相手の家に迷惑かけて一族の名前更に汚しちゃうかもねー」
あたしはいわゆる良家のお嬢様だった。
しかしあたしは人に縛られるのが大嫌いで、お嬢様らしからぬことを散々してきた。
特に女だというだけで縛り付けてくる男が大嫌いだ。
だから男に対抗出来るようにいろいろ武術を習ったし、口調もとても良家の子女のものとしては考えられないものだと思う。
そんなことを続けて来たのだから一族の名を汚されたといつも怒っている父親がいつかは何かしてくるとは思っていたが……。
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