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事務所社長
高山尚徳
資産家の両親を持ち、三人兄弟の末っ子
若い頃は相当遊んだらしい
恵まれた容姿にすらりとした長身
40才を前にした今でもそれらは色褪せてはいない
却って大人の色気が加えられ、噂ではどこぞのお姉様方からの夜毎の甘い囁きをやんわりと逸らすのに苦労しているらしい
遊び呆ける尚徳に心配した両親が訊いた
「何かしたい事は?」
「芸能プロダクションならしてもいいかな…?」
やる気もないくせに適当に言っただけだった
全て調えられ、新しい玩具のように与えられた
芸能プロダクションの社長の椅子
やる気の無い尚徳が社長では上手くいく物もいく分けがない
1人、また1人とタレントやスタッフが去るなか、何を思ったのか自分の女を女優としてデビューさせた
回りの予想に反してあれよあれよという間に人気を得る
ここに来て漸く尚徳は興味が沸く
芸能プロダクションの社長として本腰を入れ始めた
去って行ったスタッフの穴を埋める為、学生だった圭吾がアルバイトではあったがスタッフに加わったのはこの頃だ────
社長の顔を見るなりけたたましく鳴り響いていたクラクションは静かになり
運転席の男の顔が更にひきつり青ざめてさえいるようだ
後部座席の女は悪戯を咎められたように何とも言えない表情を見せた
尚徳は車の中の女と憐詞を見ると私の横を通り過ぎ
後部座席の窓を
── コンコンコン───ゆっくりと叩いた
諦めた後部座席の女
女優 坂倉奈都子がするりと降りて尚徳を上目遣いに見詰めた
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