僕の為の生誕祭

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如何してって、そりゃあ朱美が文哉さんの所に嫁いで三年。 月一ペースで実家に泣きつきに来るのを何十回も見ていれば嫌でも察するというかなんというか。 「…それで、何で僕の部屋に居る訳。」 敢えて返事を濁し此処に朱美が居る訳を、真っ当な理由を求める。 すると彼女は眉間に皺を寄せ、僕を叱り付ける様に見下ろして口を開いた。 「あんた…毎年毎年ねぇ。そろそろ覚えなさいよ。」 …何だっけ。 毎年、毎年って。 目の前に居る姉君の苛立ちに溜息をつき、僕も寝起きの頭をフル活用しそれを思い出す。 ええと、確か それは。 「結婚記念日か。」 漸く出てきた答えを口にすれば正解、と朱美は楽しげに口許を緩ませた。 だけど、例年のこの日といえば大体父親は仕事で日本に居らず これといったイベントじゃない。 電話で姉に急かされ、"結婚記念日おめでとう"と短いメールを両親に打つだけだ。 それなのに、どうして今年はわざわざ直接それを思い出させられるのか 「父さん、今年は帰ってくるみたいよ。」 今度は考える暇も無く、すぐに朱美の口によって答えは明かされた。
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