僕の為の生誕祭

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「…頼み?」 朱美の言葉に僕は素直に訝しむ。 片眉が上がり、それはあからさまに不機嫌を表した。 朱美はというとそうよ、と人差し指を唇に当て 楽しげに笑っている。 「母さん達にね、花を買ってきて欲しいのよ。」 「如何して僕がそんな」 「あんたが無職だからよ。」 そのまま強い言葉で遮られ、はいと札を二枚渡されてしまえば僕は何も言い返す事が出来ない。 唇を尖らせぶっきらぼうにそれを受け取った。 「…僕、今日誕生日なんですけど。」 「祝って欲しい?」 「……いや、いいんですけど。いいんですけどね。」 この姉は、布団取り上げたり買い物押し付けたりする前におめでとうの一言も無いんだろうか。 そう思えば無償に寂しくて、ぶつけようの無い苛立ちも沸き起こるが確かに今更祝われたら祝われたで気持ちが悪い。 僕は大きな溜息をつき、朱美の目も気にせずスウェットからジーンズに履き替えて上着を羽織る。 受け取った金は財布にいれずポケットにそのまま押し込んだら「落とすでしょ」と叱責の言葉が飛んできた。 まさかこの年になってまで子供じみた注意を受けるとは思っておらず、はいはいと返事をして僕はそのまま部屋のドアを開く。 「朱美。」 そのまま部屋を出ようとしたとき、思い出したように振り返ると朱美は既に部屋においてあった少年誌に夢中になっていた。 視線はよこさず、なにと返事だけが返ってくる。 「僕、今日夜居ないから。」 そう言うと、朱美は解せないといった顔で此方を見てきたが何かを言い返される前に僕は家を出た。
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