花屋敷

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寂れた商店街を過ぎた頃、曲がりくねった路地に進むのはケーキ屋までの近道だ。 店の名前は”ジェイソン” ファンシーさの欠片も無い名前とは他所に、ケーキの見た目は繊細で可愛らしい。 金曜日になるといつも10%オフになるので、そのネーミングから地元の子供からはよく笑いの対象にされていた。 誕生日やクリスマスケーキは至って普通のホールケーキを出すにもかかわらず、ハロウィンになるとコンクールで優勝する程の凝ったケーキを出すのが特徴だ。 おまけに、その日店主はフランケンシュタインの仮装までしだすからたちが悪い。 その妻はというと普段の格好に猫耳をつけるだけ…だというのに、そのたった一手間が物凄い破壊力をかもしだすから恐ろしい。 「…あれ、これでホールケーキって買えるよな。」 ふと、ポケットに突っ込んでいた二千円の存在を思い出し足を止める。 ホールケーキなんて買ったことがないから相場なんてしらないけれど、あれって幾らくらいするものなんだ?
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